とづいて、一九五〇年にナショナル・サイエンス・ファウンデーションの制度が生まれた。これは、科学研究の助成とコーオーディネーションとを目的としている。
 大学の研究所でさえ、国家予算によってまかなわれる部分が大きく、とりわけ最近では軍の予算から出ているものは約八割を占めている。その他、産業会社の委嘱による研究調査も重要な比重を占めており、結局、政府および会社の委託調査費が約九割を占めているとみられる。そしてその委託調査の形式は、コントラクト・リサーチが支配的である。研究者は研究費を受取り、成果を提供するという、ギヴ・アンド・テークの形式である。それ以外に何の束縛もうけないが、成果を引渡す責任を負うわけである。国家が科学研究に関与することについては、科学者の間に反対もある。研究調査は自由な立場でなされるべきことに対して強い愛着を感じているからである。しかし、これは概して年老いた科学者の考えであって、若い科学者たちは研究調査費の獲得という現実的問題からして、国家予算の分配を強く要望している。
 だが、アメリカにはまだ民間の有力な研究調査機関があり、デュポン、スタンダード・オイル、ゼネラル・エ
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