である。
 法律が、人民のために、人民自身がつくるものだということを、目の前にみせようとして、この図書館はできあがった。
 そのためには、行政、司法各省に支部図書館をおいて、おたがいに材料を見せあい、利用しあって、分裂しないようにすることとなっている。また、一般人民からの問い合わせには、葉書でも、電話でも、すぐにまにあうように準備しなければならない。だから本を読ませるだけでなく、調査が大切なのである。新聞も雑誌も、そのために全部きりぬき、整理保存されるのである。
 ちょうど、中央気象台へ直結する気象電話のように、毎日の新聞雑誌はこの図書館に集まってくる。館はそれを連絡整理する。そして一つの表ができあがってみると、毎日の天気図のように、日本の政治経済の低気圧が、どこにあるかがわかる。時をうつさず議員、行政各官庁、一般国民のために、適切な警報を用意する。これがこの美しい殿堂の中に動いている新しい組織なのである。この組織は、目にみえないが、豪華なこの殿堂よりも幾十倍も美しいものであるといえる。
 それは両足で立ち、言葉をつくり、そして人間の法則を自分で発見できることを、二十万年の歴史のはてに今、実証し、きらめく星もが持たない新しい秩序を自分の手でたしかめ、完成しようとしているのである。



底本:「論理とその実践――組織論から図書館像へ――」てんびん社
   1972(昭和47)年11月20日第1刷発行
   1976(昭和51)年3月20日第2刷発行
初出:「世界画報」
   1948(昭和23)年9月
入力:鈴木厚司
校正:宮元淳一
2005年6月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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