イクロカードの中に沈んでゆく書籍は、電話連絡のインフォーメイションとともに、もはや、単独空間の図書館概念を破壊しはじめたのである。
 アメリカにない、各省、司法の図書館を支部図書館とする国立国会図書館の支部図書館の組織は、そのもつ四百万冊の本の電話連絡による捜索、ユニオン・カタローグの操作によって、二十分以内で、たいていその本のロケーションが把握できるのである。
 かかる機構は「読書室のない図書館」の概念も決してパラドックスでなく、カードと連絡さえしっかりすれば、それは最も便利なサービス機関とさえなるのではないだろうか。
 かくて、かつての文庫形式から、図書館へ、さらにインフォーメイション・センターとしての大組織に、図書館の未来像として、それはメタモルフォーゼしつつあるのである。



底本:「中井正一評論集」岩波文庫、岩波書店
   1995(平成7)年6月16日第1刷発行
底本の親本:「中井正一全集」美術出版社
   1964(昭和39)〜1981(昭和56)年
初出:「図書館年鑑」
   1951(昭和26)年10月
入力:鈴木厚司
校正:宮元淳一
2005年3月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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