のフォームにはまったときである。
「形」をとらえた動き、一つの文と図式をとらえた行動のことである。
 かかる行動は、絶望に似た限界にまで訓練されたときのみ、到達する行動で、日常の行動に比べれば、巨大なる行動である。
 その「形」は常に破られて新たになる成長する形であるが、そのときには、そのときの「のりとられる」べき形である。それを証するものは、行動にともなう「楽になること」であり、爽かなる愉悦である。
 私たちが本をあつめ、その整理をし、それが、何人の求めにも応じて、とり出せるように準備することは、すなわち図書館の活動は、その文字をつらぬいて、文字の始源である生活の「文」、すなわち形を行動をもって捉え、より高い形にまで、それを高めることを本質とするのではあるまいか。
 私たちは書架に並ぶ本を見ているとき、その文字の背後に、無限に発展し、乗り越えてきた「形」の集積、今、まさに乗り越えようとして前のめっている、崩れたら、形成しなおそうとしている、成長の生きている形の展望を感ぜずにはいられない。
 図書館の中に生きることは、この「形」の発展の形成を、生き身をもって生きることにほかならない。



底本:「中井正一評論集」岩波文庫、岩波書店
   1995(平成7)年6月16日第1刷発行
底本の親本:「中井正一全集」美術出版社
   1964(昭和39)〜1981(昭和56)年
初出:「図書館雑誌」
   1949(昭和24)年5月
入力:鈴木厚司
校正:宮元淳一
2005年3月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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