この水よ開け」というこころ、あのこころざし、これほど、今、この歴史の中で、大衆の三寸の胸に叫びつづけている言葉はない。
 それは最もリアルな叫びなのである。
 この叫びが、映画のカットをつなぐ、最も強力なアクセントなのである。
 映画の文法は、この大衆の暗い叫びのリアルさをさぐり求めて進んでいくことに、これまでの芸術にない、巨大な武器と構成要素をもっている。作者も、その一員となって、世界と共にうたわなければならない創作構成をもっている。
 しかし、この文法の駆使は、まだ、真に文学から独立して、自分のものとして荒々しい力をもって立ちあがっているとはいえないのではあるまいか。
[#地付き]*『シナリオ』一九五〇年七月号



底本:「中井正一全集 第三巻 現代芸術の空間」美術出版社
   1981(昭和56)年5月25日新装第1刷
初出:「シナリオ」
   1950(昭和25)年7月号
入力:鈴木厚司
校正:宮元淳一
2005年3月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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