よるほど安全にも経済的にもまた迅速にも行われないであろうが、この私の提案した手段に対しては、銀行は、他人をして鋳貨で流通貨幣を供給せしめるよりもむしろ紙幣でそれを供給するのが彼らの利益に合するから何らの反対も提起しないであろう。
『かかる制度の下において、かつかくの如く統制された通貨をもってすれば、銀行は、一般的パニックが国を襲い、そしてあらゆる者がその財産を実現しまたはこれを隠蔽《いんぺい》する最も便利な方法として貴金属を所有せんと望む所の異常の場合を除けば、何らの困惑をも蒙らないであろう。かかるパニックに対しては、いかなる制度によっても[#「いかなる制度によっても」に傍点]銀行は何らの安固をも有たない。まさにその性質そのものにより銀行は恐慌を蒙らなければならぬが、それはけだしいかなる時においても、かかる国の金持達が請求権を有するだけの正金または地金の量は、銀行にも国内にも有り得ないからである。もしあらゆる者が同じ日にその銀行からその預入残を引出すならば、今流通している銀行券の多数倍の分量でもかかる要求に応ずるに足りないであろう。この種のパニックが一七九七年の恐慌の原因であったのであり、想像されている如くに、銀行が当時政府に対してなした多額の融通がその原因であったのではない。その時に銀行も政府も悪い点はなかった。銀行取付を惹起したものは、社会の小心な一部の無根拠な恐怖の伝播であり、そして銀行が政府にいかなる融通もなさずそしてその現在の資本の二倍を所有していたとしても、それは等しく起ったことであろう。
『紙幣を発行するについての規則に対する銀行理事の周知の意見をもってすれば、彼らは、その力を大して慎重にもせずに行使したと言われ得よう。彼らが極度に注意して、彼ら自身の原理に随《したが》って行動したことは明かである。現在の法律状態においては、彼らは、何らの監督も受けず自ら適当と考えるいかなる程度にも流通貨幣を増減する力を有っているが、それは、国家自身にもまたその中のいかなる団体にも与えられるべきではない力である。けだし通貨の増減がもっぱら発行者達の意思に依存している時には、通貨の価値の斉一性に対しては何らの保証も有り得ないからである。銀行が流通貨幣を全く最も狭い限度にまで減少せしめる力を有っているということは、理事は無限にその分量を増加する力を有っていないということで理事と同意見の人によってすら、否定されないであろう。この力を公衆の利益を犠牲にして行使することが銀行の利益にも希望にも反するものであることは私は十分確信するとはいえ、しかも、私は、流通貨幣の突如たるかつ大なる減少並びにその大なる増加により起りもすべき悪結果を考慮する時には、国家が無造作にかくも恐るべき特権で銀行を武装したことを否とせざるを得ないのである。
『現金兌換の停止以前に地方銀行が蒙った不便は、時には、極めて大であったに相違ない。すべての危急の時期または予期された危急の時期には、地方銀行は、起り得る一切の緊急事変に応じ得んがためにギニイ貨を備えておかねばならなかったに相違ない。ギニイ貨は、かかる場合にはより[#「より」に傍点]多額の銀行券と引換えに英蘭《イングランド》銀行で得られ、そして費用と危険とを賭けて、ある信用ある代理人によって地方銀行に運ばれた。それがなすべき職務を果した後に、それは再びロンドンに戻り、そして、それが法定標準以下になってしまうような量目の減少を蒙っていなければ、ほとんど常にまたも英蘭《イングランド》銀行に貯蔵されたのである。
『もし今提議されている銀行券を地金で支払うという案が採用されるならば、この特権を地方銀行にまで拡張するかまたは英蘭《イングランド》銀行券を法貨とするかいずれかが必要であろうが、この後の場合には、地方銀行は、現在と同様に、要求される時にその銀行券を英蘭《イングランド》銀行券で支払わしめられるであろうから、地方銀行に関する法律には何らの変更もないであろう。
『転々する間に受けるにきまっている摩擦による量目の減少にギニイ貨を委ねないことによって生ずる節約、並びに運搬費の節約は、著しいであろう。しかし遥かに最大の利益は、少額の支払の関する限りにおいて、地方並びにロンドンの通貨の永久的供給が、はなはだ高価な媒介物たる金ではなく極めて低廉な媒介物たる紙でなされることから生じ、ひいては国をしてその額に当る資本の生産的使用によって取得され得べきすべての利潤を獲得するを得しめるであろう。ある特別の不利益がより[#「より」に傍点]低廉な媒介物の採用に伴生する傾向あることが指示され得ない限り、吾々は確かにかくも決定的な利益を拒否する権利はないはずである。』〕
通貨は、それが全然紙幣から成る時に、その最も完全な状態にあるのであるが、その紙
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