し原文には『あらゆる人は、云々』とある。)
[#ここで字下げ終わり]
しからば、価値は本質的に富と異る、けだし価値は生産の量に依存するものではなくその難易に依存するからである。製造業における一百万人の労働は、常に同一の価値を生産するであろうが、しかし必ずしも同一の富を生産しはしないであろう。機械の発明により、熟練の進歩により、より[#「より」に傍点]良き分業により、またはより[#「より」に傍点]有利な交換がなされ得べき新市場の発見によって、一百万の人々は、、一つの社会状態において、他の状態において生産し得るであろう所の二倍または三倍の富を、すなわち『必要品、便利品、及び娯楽品』を生産し得るであろうが、しかし彼らはその故に価値に何物かを附加するということはないであろう、けだしあらゆる物は、それを生産する難易に比例して、換言すればその生産に用いられる労働量に比例して、価値において騰貴しまたは下落するのであるが故である。一定の資本をもって、一定数の人間の労働が一、〇〇〇足の靴下を生産していたと仮定し、そして機械の発明によって同一数の人間が二、〇〇〇足の靴下を生産することを得、または彼らは引続き一、〇〇〇足の靴下も生産し得かつ五〇〇箇の帽子を余分に生産し得ると仮定すれば、二、〇〇〇足の靴下の価値、または一、〇〇〇足の靴下と五〇〇箇の帽子との価値は、機械の採用以前における一、〇〇〇足の靴下の価値以上でも以下でもないであろう、けだしそれらは同一量の労働の生産物であるからである。しかし貨物の総量の価値はそれにもかかわらず減少されるであろう、けだし、たとえ改良の結果増加された生産物量の価値は、何らの改良も起らなかった場合に生産されていたであろう所のより[#「より」に傍点]少い分量が有っていた価値と正確に同一であろうとはいえ、その改良以前に製造された所のなお未だ消費されない部分の財貨にもまた、影響が及ぶからである。それらの財貨は、いちいち、改良のすべての便益の下で生産された財貨の水準にまで下落しなければならぬから、その価値は下落するであろう。そして社会は、貨物の分量が増加されたにもかかわらず、その富が増大されその享楽資料が増大されたにもかかわらず、より[#「より」に傍点]少量の価値しか有たぬであろう。不断に生産の便宜を増加せしめることによって、吾々は啻に国富を増加せしめるのみならず更に将来の生産力を増加せしめているとはいえ、吾々は、同一の手段によって、不断に、以前に生産された貨物のあるものの価値を減少せしめるのである。経済学上の誤謬の多くは、この問題に関する誤謬、すなわち富の増加と価値の増加とをもって同じことを意味すると考えることから、また何が、価値の標準尺度を成すかについての根拠なき観念から、生じたものである。
(九六)ある人は貨幣をもって価値の一標準と考えている。そして彼によれば、一国民は、その有するすべての種類の貨物と交換され得る貨幣量の多少に比例して、富みまたは貧しくなるのである。他のものは、貨幣をもって交換の目的のための極めて便利な一媒介物ではあるが、しかしそれによって他物の価値を測定する適当な一尺度とは云えないとする。彼らによれば、価値の真実の尺度は穀物であり(註一)、そして一国は、その国の貨物と交換される穀物の多少に従って、富みまたは貧しいのである(註二)。更に他のものは、一国はそれが購買し得る労働量に従って富みまたは貧しいと考える。しかし何故《なにゆえ》に金や穀物や労働は、石炭や鉄以上に、――毛織布や石鹸や蝋燭やその他の労働者の必要品以上に、――価値に標準尺度となるべきであるか? ――略言すれば、何故《なにゆえ》にある貨物もしくはすべての貨物全体が、それ自身が価値において変動を蒙るのに、この標準となるべきであるか? 穀物は金と同じく生産の難易によって他物に比して一〇%、二〇%、または三〇%変動し得よう。何故《なにゆえ》に吾々は、変動したのはこれらの他物であって、穀物ではない、と常に言わねばならぬのか? 常にその生産に骨折と労働との同一の犠牲を必要とする貨物のみが不変なのである。吾々はかかる貨物の存在を知らない。しかし吾々は、それを知っているかの如くに仮設的にそれについて論じてよかろう。そして在来採用され来ったすべての標準が絶対的に無能力なことを明確に示すことによって、斯学に関する吾々の知識を進めることが出来るであろう。しかし、これらのもののいずれかが価値の正しい標準であると仮定しても、しかもなお、富は価値に依存するものではないから、それは富の標準とはならないであろう。人は、彼が支配し得る必要品及び奢侈品の多少によって富みまたは貧しいのである。そしてその貨幣や穀物や労働に対する交換価値が高かろうと低かろうと、それらのものは等しく
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