Mし、そして帽子は下落するであろうが、それは、その時には、帽子及び他のすべての物のより[#「より」に傍点]大なる分量が同一量の金を購買するために必要であろうからである。しかし仮定された場合において、労賃が騰貴するから貨物が騰貴するであろうというのは、明かな矛盾を肯定することになる。けだし吾々は第一に、金は需要の結果相対価値において騰貴するであろうと言い、そして第二に、それは物価が騰貴するから相対価値において下落するであろうと言っているが、これは互に全然両立し得ない二つの結果であるからである。価格において貨物が騰貴すると言うのは、相対価値において貨幣が下落すると言うのと同一である。けだし金の相対価値が測られるのは貨物によってであるから。しからばもしすべての貨物が価格において騰貴するならば、金は、これらの高価なる貨物を購買するために、外国から来ることは出来ないが、しかしそれは比較的により[#「より」に傍点]低廉な外国貨物の購買に用いるのが有利であるから、それに用いるために国内から出て行くであろう。しからば労賃の騰貴は、貨幣の材料たる金属が国内で生産されようとまたは外国で生産されようと、貨物の価格を引上げはしないであろうと思われる。すべての貨物は、貨幣の分量の附加なくしては同時に騰貴し得ない。この附加は、既に示した如くに、内国においても取得され得ず、また外国からも輸入され得ない。金のある附加量を外国から購買するためには、内国の貨物が高価でなく低廉でなければならぬ。金の輸入と、それで金が購買されまたは支払われるあらゆる国産貨物の価格騰貴とは、絶対的に両立し得ない二結果である。紙幣の広汎なる使用もこの問題を変更しはしない、けだし、紙幣は金の価値に一致するかまたは一致すべきであり、従ってその価値はこの金属の価値に影響する原因によってのみ影響されるからである。
 しからばかかるものが、労賃を左右し、かつあらゆる社会の最大部分の幸福を支配する所の、法則である。あらゆる他の契約と同様に、労賃は市場の公正なかつ自由な競争に委ねらるべく、決して立法の干渉によって支配されてはならない。
(四一)救貧法の明白なかつ直接的な傾向は、かかる明白な諸原理に全く反するものである。それは、立法者が慈悲深くも意図したが如くに、貧民の境遇を改善すべきものではなくして、富者と貧者との双方の境遇を悪化せしむべきものである。貧民を富ましめることはなくして、それは富者を貧しくせんとするものである。そして現在の法律の施行中は、貧民を維持するための基金は逓増的に増加して、ついにそれは国の純収入のすべてを、または少くとも公共の支出に対する国家自身の欠くべからざる必要を満たした後に国家が吾々に残す純収入のすべてを、吸収するのは、全く事理の当然である(註)。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
(註)次のビウキャナン氏の章句に、私は、もしそれが窮乏の一時的状態を指すものであるならば、その限りにおいて同意する、すなわち、『労働者の境遇の大なる害悪は、食物の不足かまたは仕事の不足から起る貧困である。そしてあらゆる国において無数の法律が彼れの救済のために施行され来った。しかし立法が救済し得ない窮乏が社会状態にある。従って、行い得ないことを目指すがために真に吾々がなし得る善を見失わないために、その限界を知ることが有用である。』ビウキャナン、六一頁。
[#ここで字下げ終わり]
 かかる法律の有害なる傾向は、マルサス氏の有為な手によって十分に展開されているから、もはや神秘ではない(編者註)。そしてあらゆる貧民の友は熱心にその廃止を希望しなければならない。しかしながら不幸にして、それは極めて古くから行われ来っており、かつ貧民の慣習はその作用に基いて形造られ来っているから、吾々の政治組織から安全にそれを取除くことは、最も注意深くかつ巧妙な処理を必要とする。この法律の廃止に最も賛成な人々は、その利益のためにこの法律が誤って設けられた所の者に対する、最も恐るべき惨苦を妨げるのが望ましいならば、その廃止は最も徐々たる順序によってなさるべきであることに、すべて一致している。
[#ここから2字下げ]
(編者註)『人口論』第三篇、第五、六、七章、第四篇、第八章。
[#ここで字下げ終わり]
 貧民の慰楽と福祉とは、彼らの数の増加を規制し、かつ早婚や不用意な結婚を彼らの間で減少せしめるために、彼らの側での幾らかの注意か、立法者の側での幾らかの努力がなければ、永久に確保され得ないことは、疑を容れない真理である。救貧法の制度の作用はこれに正反対であった。それは抑制を余計のものとし、そして慎慮と勤労とによって得た労賃の一部分をそれに与えることによって、不慎慮を招いたのである(註)。
[#ここから2字下げ、折り返し
前へ 次へ
全173ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
リカードウ デイヴィッド の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング