、が、しかしそれは主として労働の支持に用いられ、そして極めてわずかが、器具、機械、及び建物に投ぜられるであろう。労働の労賃の騰貴がかかる異った事情の下において生産される貨物に対して及ぼす影響は、異らざるを得ない。
 更に、二人の製造業者が同一量の固定資本と同一量の流動資本とを用いるが、しかし彼らの固定資本の耐久力は極めて不等であることがあろう。一方は一〇、〇〇〇|磅《ポンド》の価値の蒸気機関を有ち、他方は同じ価値の船舶を有つこともあろう。
 もし人々が生産に何ら機械を用いずただ労働のみを用い、そしてその貨物を市場に齎すまでにすべて同一時間を要するとすれば、彼らの財貨の交換価値は用いられた労働の分量に正確に比例するであろう。
 もし彼らが同一の価値を有ちかつ同一の耐久力を有つ固定資本を使用するならば、その時にもまた、生産された貨物の価値は同一であり、そしてそれはその生産に使用された労働量の大小に応じて変動するであろう。
(一八)しかしたとえ、同様の事情の下において生産された貨物は、その一または他を生産するに必要な労働の分量の増加または減少を除くいかなる原因によっても、相互に対して変動しないであろうとはいえ、しかも同一の比例の量の固定資本をもって生産されない所の他のものに比較するならば、たとえそのいずれの貨物の生産に必要な労働量には増減がなくとも、私が先きに述べた他の原因、すなわち労働の価値の騰貴によってもまた変動するであろう。大麦及び燕麦は労賃がいかに変動するとも、相互に引続き同一の関係を維持するであろう。綿製品及び毛織布も、それがもし相互に正確に同様な事情の下において生産されるならば、前の場合と同様であろう、しかしながら労賃の騰貴または下落と共に、大麦は綿製品に比較して、また燕麦は毛織布に比較して、価値がより[#「より」に傍点]多くもまたはより[#「より」に傍点]少くもなるであろう。
 二人の人が各々百名の人間を二台の機械の建造に一年間用い、そしてもう一人の人が同一数の人間を穀物の耕作に用いると仮定すれば、各々の機械は、その年の終りに、穀物と同一の価値を有つであろうが、それは、それらが各々同一の労働量によって生産されるであろうからである。この機械の一つの所有者が、翌年、百名の人間の助力によって、それを毛織布の製造に使用し、そしてもう一つの機械を所有する人もまた、同様
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