チてより[#「より」に傍点]少い穀物と交換されるであろう。しかし穀物の高き価格の結果起る諸結果は、それが穀価の騰貴によって惹起された場合と貨幣価値の下落によって惹起された場合とでは、全然異っている。双方の場合において労賃の貨幣価格は騰貴するであろうが、しかしもしそれが貨幣価値の下落の結果であるならば、単に労賃及び穀物のみならず、更にすべての他の貨物も騰貴するであろう。製造業者は労賃としてより[#「より」に傍点]多くを支払わなければならぬとしても、彼れの製造財貨に対し彼はより[#「より」に傍点]多くを受取り、そして利潤率は依然影響を受けないであろう。しかし穀価の騰貴が生産の困難の結果である時には、利潤は下落するであろう、けだし製造業はより[#「より」に傍点]多くの労賃を支払うを余儀なくされ、そして彼れの製造貨物の価格の引上げによって補償を得ることが出来ないであろうから。
(五三)鉱山採掘の便宜における進歩によって貴金属類がより[#「より」に傍点]少い労働をもって生産され得るに至るならば、貨幣価値は一般に下落するであろう。その時にはそれはすべての国においてより[#「より」に傍点]少い貨物と交換されるであろう。しかしある特定の国が製造業において優越し、そのためその国への貨幣の流入が惹起される時には、その国においては他の国におけるよりも貨幣はより[#「より」に傍点]低く、そして穀物及び労働の価格は相対的により[#「より」に傍点]高いであろう。
 このより[#「より」に傍点]高い貨幣価値は為替相場によっては表示されないであろう。手形は、一つの国においては他国よりも穀物及び労働の価格が一〇%、二〇%、または三〇%だけより[#「より」に傍点]高くあっても、引続き額面で授受されるであろう。仮定された事情の下においてはかかる価格の差異は事理の当然であり、そして為替相場は、製造業に優越する国に十分な分量の貨幣が導入され、ためにその国の穀物及び労働の価格が引上げられる時においてのみ、平価にあり得るのである。もし外国が貨幣の輸出を禁止し、そしてかかる法律の遵守を強制することに成功するならば、その国は実際は、製造業国の穀物及び労働の価格騰貴を妨げ得るであろう。けだし、紙幣が用いられていないと仮定すれば、かくの如き騰貴は、貴金属の流入の後にのみ起り得るからである。しかしそれは為替相場がその国に
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