ゥら、それを輸入するであろう、けだしこの国にとって、その資本の一部分を葡萄の栽培から毛織布の製造に移すことによって生産し得るよりもより[#「より」に傍点]多くの毛織布を英国から取得するであろうところの、葡萄酒の生産に、その資本を用いる方が、むしろ有利であるからである。
 かくて英国は、八〇名の労働の生産物に対して、一〇〇名の労働の生産物を与えるであろう。かかる交換は同一国の個人の間では起り得ないであろう。一〇〇名の英国人の労働は、八〇名の英国人のそれに対して与えられ得ない、しかし一〇〇名の英国人の労働の生産物は、八〇名のポルトガル人の、六〇名のロシア人の、または一二〇名の東印度人の労働の生産物に対して、与えられ得よう。一国と多くの国との間のこの点に関する相違は、資本がより[#「より」に傍点]有利な職業を求めて一国から他国に移動する困難と、同一国において資本が常に一つの地方から他の地方に移る敏速さとを考慮すれば、容易に説明されるのである(註)。
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(註)しからば、機械及び技術に極めて著しい便益を有し、従ってその隣国よりも極めてより[#「より」に傍点]少い労働をもって貨物を製造し得る国は、たとえその土地がより[#「より」に傍点]肥沃であり、そしてそこから穀物を輸入する国におけるよりも、より[#「より」に傍点]少い労働をもって穀物が栽培され得るとしても、その消費のために必要とされる穀物の一部分を製造貨物と引換に輸入するであろう。二名の人が共に靴と帽子とを造ることが出来、そして一方はこの両職業において他方に優越しているとし、ただし帽子を造る上では、彼はその競争者に単に五分の一すなわち二〇%優れているに過ぎず、そして靴を造る上では、彼は競争者に三三%優れているとする、――優越せる人はもっぱら靴の製造に従事し、そして劣れる人は帽子の製造に従事するというのが、双方の利益ではないであろうか?
[#ここで字下げ終わり]
 英国の資本家と両国の消費者にとっては、かかる事情の下においては、葡萄酒と毛織布との双方がポルトガルにおいて造られ、従って毛織布の製造に用いられている英国の資本と労働とがその目的のためにポルトガルへ移されるのが、疑いもなく有利であろう。その場合には、これらの貨物の相対価値は、一方がヨオクシアの産物であり他方がロンドンの産物であ
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