う。
 資本はその価値の騰貴と同時に分量において増加し得よう。以前よりもより[#「より」に傍点]多くの労働が附加的分量を生産するに必要とされると同じ時に、一国の食物及び衣服に附加がなされ得よう。その場合には啻に資本の分量のみならず更にその価値もまた増大するであろう。
 または資本は、その価値が増加することなしに、、かつその価値が実際減少しつつある間にすら、増加し得よう。啻に一国の食物及び衣服に附加がなされ得るのみならず、更にその附加は、機械の援助によって、それを生産するに必要な労働の比例的分量の増加なくして、かつその絶対的の減少をすら伴って、なされ得よう。資本の量は増加するであろうが、しかるに、その全部の合計にしろ、またはその一部分単独にしろ、以前よりもより[#「より」に傍点]大なる価値を有たず、実際により[#「より」に傍点]少い価値を有つであろう。
 第一の場合においては、常に食物、衣服、その他の必要品の価格に依存する労働の自然価格は、騰貴するであろう。第二の場合においては、それは引続き静止的であるかまたは下落するであろう。しかし双方の場合において、資本の増加に比例して労働に対する需要の増加があるであろうし、なさるべき仕事に比例してそれをなすべき人々に対する需要があるであろうから、労賃の市場率は騰貴するであろう。
 双方の場合においてまた、労働の市場価格はその自然価格以上に騰貴するであろう。そして双方の場合において、それはその自然価格に一致せんとする傾向を有つであろうが、しかしそれは多くは改善されないであろう。けだし食物及び必要品の価格の騰貴は、彼れの労賃の騰貴の大部分を吸収してしまうであろうから。従って、労働の少しの供給は、または人口の僅少の増加は、市場価格をその時の騰貴した労働の自然価格にまでまもなく低下せしめるであろう。
 第二の場合においては、労働者の境遇は極めて著しく改善せられるであろう。彼は、自分とその家族とが消費する貨物に対して、騰貴せる価格を支払うの必要なくして、かつおそらく下落せる価格をさえ支払って、騰貴せる貨幣労賃をば受取るであろう。そして労働の市場価格が再びその時の低きかつ下落せるその自然価格にまで下落するのは、人口に大なる増加が起って後のことであろう。
 かくてしからば、社会の進歩ごとに、その資本の増加ごとに、労働の市場労賃は騰貴するであ
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