なつて了つた.
然し茲に Bohr の力量を示す機會が來た.それは Christiansen が自分の講義に關聯して,1905年に丁抹の學士院をして物理學の懸賞論文を募集させた事である.其の題目は“Rayleigh の液體 jet の定常振動の理論を用ひて表面張力を測定”せよといふのであつた.Bohr は此の問題に着手し,自宅(官舍)にあつた嚴父の實驗室で實驗を行つた.此實驗は一度始めると終る迄は止められなかつたので,夜おそく迄も續けなくてはならなかつたといふことである.
論文は1906年10月に提出され,翌1907年には學士院から金牌が授けられた.此論文は London の Royal Society の Phil. Transaction (1909)(1)*[#「(1)*」は上付き小文字]に發表せられたが,これが Bohr の唯一の實驗物理學に關する論文である.此頃は勿論その後も Bohr は實驗物理學者たることを志して居たやうであつたが,理論物理學における大きな業績は Bohr をそちらに掻つて行つて了つた.
上述の論文を見て氣の付くことは,Bohr が其構想に於ても又技
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