である.從つて多くの科學は何等かの形でそのお蔭を蒙つて居る.否科學のみならず吾人の思想,觀念にも重大な影響を及ぼさうとして居るのである.その結果でもあり又本來の性格でもあるが,Bohr の關心は科學,哲學等の廣汎な範圍に亙つて居る.興味を惹かぬ領域の事は輕蔑するのが人の常である.その反作用としてその領域の人からは相談を持ちかけられない人となつてしまふ.Bohr は物理學以外に化學,生物學等の廣い範圍に同情と理解とがある.而かもそれが下手の横好きといふのではなく,問題の核心を把握する素質を備へて居るのであるから,誰しも敬畏する道理である.
又 Bohr の學界に對する態度は,國の東西を問はず相提携して學術の進歩を念願として居るのである.それが爲にはあらゆる手段を講じて同僚後輩のために學術上,人事上の助力を惜まない.今日の新しい物理學を推進して居る多くの有爲な人々は,直接か間接か何かの機會に於て Bohr から教へられてゐる事が多い.殊に Copenhagen の Bohr の研究所に雲集する人々は,Heisenberg のいふ Kopenhagener Geist で以て仕込まれるので
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