りき。又英国の埃及に対する保護権は、公然法律を以て設定せられたるにはあらざりき。而もクローマー男は二十余年間の拮据経営によりて、英国の埃及保護を既成事実として列国に承認せしめたりき。仏国の殖民政策は大抵失敗の歴史を有すれども、比較的効果を挙げつゝあるものは、印度支那に於ける保護政治なりとす。而して其の功労は主として之をラネツサン氏に帰せざるべからず。我が伊藤統監を以て此の二人に比するは、未だ其の時機を得たるものに非ずと雖も、侯が日本に於て最初の保護国統治者たる名誉を得たると共に、其の韓国に施設する所は、事の大小を問はず、均しく内外の注目を集中すること、恐らくはクローマー男にも将たラネツサンにも過ぐるものあるべし。况むや侯は政治家としての声望固より夐に此の二人の上に出づるをや。
クローマー男は模範英人ともいふべき実行家にして、其の精敏堅実なる事務的能力は、埃及に於ける諸般の施設に顕はれたる成績能く是を証明せり。彼は高遠なる理想を以て埃及を指導するよりも、直に手を眼前の行政事務に下だして、実際上より之れを改良するの得策なるを知りて、先づ灌漑工事を興して水利を治めたりき。是れ埃及の唯一財源
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