せしめ、宜しく懲犯すべしと宣へり。姜等の罪状は果して皇帝の与知せざる所なるか。皇帝は又宮中粛清に関し、詔して曰く、宮中の粛清は、屡々勅諭を下して之れを誡めたるに、久しければ輙ち懈弛して秩序を紊るの失態を見ると。知らず皇帝は曾て宮中粛清を誡めたることあるか。
 此の間に於ける伊藤侯の措置は実に迅雷疾風の如くなりき。韓国の上下震慴して、殆ど其の為す所を知らざるの状想ふ可し。侯の初めに綏撫手段を採りたるもの、今や一転して圧威手段を執るの止むを得ざるに至れり。斯くの如く侯が前後全く別人に似たるの挙に出でたるは、以て侯の決心の頗る固きものあるを知るべく、侯若し此の機会に於て韓国皇帝の人格を研究せば、其の発明する所亦必らず多からん。顧ふに宮中粛清の事たる、従来日本政府が施政の改善を助言する毎に、先づ第一に之れを勧むるを例とせり。然れども皇帝自ら正うせずして宮廷の正しかるべきやうなく、特に韓国皇帝は最も夜の趣味に感ずること深きがゆゑに、魑魅魍魎は時を得顔に君側を徘徊して毒焔を煽ぐに於て、宮中の粛清何を以て行はれむや。所詮陰謀は韓国皇帝の附き物なり。雑輩の出入は之れを禁じ得べしと雖も、宮廷の陰謀は終に
前へ 次へ
全350ページ中72ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング