の取締を厳重にすること度に過ぎたりと非難せられたりき。蓋し日本政府の対韓策は、二十年来一貫して始終渝る所なく、常に正義と友誼とを以て、韓国の平和及び文明を発達せしむるに力を致したると共に、又韓国に於ける日本の権利及び利益を保護するを旨としたりき。而も此政策は、韓国に出入する不道徳の日本人に障害せられて、十分韓民に徹底せざりしこと往々之れありしのみならず、極言せば韓民の日本に対する悪感情は、主として韓国に出入する日本人の行為に基くもの多かりき。是れ伊藤侯が特に居留日本人の取締を厳重にして、公明正大なる日本政府の措置を中外に彰表し、以て韓民の心を安むじ、併せて関係列国に平静を与へむと欲する所以なるべし。要するに侯が韓国統監としての第一用意は日本に対する韓国上下の誤解を排除するに在るものゝ如し。是れ易きに似て実は最も難儀なる仕事なれども、世間多くは侯の用意を是認し、且つ侯の老練と声望とを以てして必らず成功に到達するの時期あるを信ぜり。
然るに本年五月、侯が凱旋大観兵式に参列せむが為に帰朝したるまゝ、月を越えて東京に淹流するに乗じ、韓国の各地に宮中の隠謀と関聯したる暴動は起れり。而して其の頭
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