ハデでない代りに、随分細かい、面倒臭い処があるから、何でも根気よく、勉強するに限る。それに東京の市政にはいろ/\の歴史もあり、込み入つた情実もあるから、政党を率いたり、国会議場で討論するやうな訳に往かない。君は市会を小国会にし、市庁を小内閣にする抱負があるさうだが、ソンなことは市政には余り必要がない。市政は直接に市民の生活問題に関係するものだから、教育とか、衛生とか、交通機関とかいふ実際の施設に最も注意してもらひたいのである。市会がどうの、市庁の組織がどうのといふやうなものは、格別大事でないと考へる。
 ▲どうも理想家は、空理空論に流がれて、実務の上に手を抜く弊があるから、尾崎君も余つぽど用心しないと、つまらない失敗を取らないとも限らない。君は宜しく市民の人気に背かないやうに甘く遣るべしだ。(三十七年八月)

     尾崎行雄氏の半面

 此頃外債問題討議の市会議場に於て、市長尾崎行雄氏は、久しぶりにて大気焔を吐きたり。氏は某議院が、外債のコムミツシヨンを如何に処分するやと言へるを聞き咎めて、行雄は二十年来政海の激浪を経来れり、十万二十万の端金の為に名節を汚すものに非ずと傲語し、以て
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