として飽くまで沼間と頡頏せむとせり※[#白ゴマ、1−3−29]以て其抱負の凡ならざるを諒す可し。
彼れが自負心強く、夸大の空想に耽り、荘厳なる英雄の舞台に神迷するの状は、亦明かに彼れの風采にも躍然たり※[#白ゴマ、1−3−29]其昂々焉として鷹揚なる処、其冷静にして容易に笑はざる処、其動もすれば気を以て人を圧せむとする処、皆彼れが気象の外表たらざる莫し※[#白ゴマ、1−3−29]然れども彼れ不幸にして、如何なる時代の英雄にも大抵普通なる特質を其風采に欠けり。英雄の特質とは何ぞや曰く磊落粗朴の野性、曰く道理に拘泥せずして盲進する獣力是れなり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れの衣貌は寧ろワザとらしき躰裁を示すに非ずや※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは一髪を櫛るにも、香水と鏡台とを要すといふに非ずや、其蝮蛇の如き眼光もて四方を睥睨するの、如何に注意深き神経質を表するかを見よ※[#白ゴマ、1−3−29]其一言一句を苟もせずして勉て多弁の弊を避くるの、如何に小心翼々として或る点に謹慎なるかを見よ、単に彼れの風采よりいへば、彼れは虚飾にして異を衒ふの癖あるものゝ如く、即ち衣冠の英雄にして裸躰の英雄
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