きことあらむや。
彼れの人格思想は、伊藤公爵大隈伯爵等と対照すれば、より多く東洋的なりと雖も、若し強ひて欧洲に其の比倫を求めば、英国のウエリントン其の人を挙げざるべからず。出でては元帥たり入つては宰相たる所、我が山県公爵とウエリントンと東西の好一対なるべく、其の政治思想の保守的に傾けること亦二人甚だ相遠からず。唯だウエリントンは殆ど政治家たるの一能力だも備へざりき。彼は経綸若くは政術に就いては僅少の智識を有したるのみ。彼れが唯一の注意は女皇内閣の権力を完全に維持せむとするに在りき。彼は過失多き政治家なりき。無策の政治家なりき。而も其の能く首相として内閣を組織し得たるは、彼れが赫々たる戦功に伴へる威望の力に由りたるのみ。我が山県公爵が、其の本領の亦軍事に在るに拘らず、其の政治の方面に於ても偉大の勢力を有すると同日にして語るべからず。然れども二人に共通する特色は、社交的色彩を放てる生涯を有せざる是れなり。ウエリントンは毫も公衆の感情に頓着せざると共に、又公衆に好愛せらるべき、傾向を其の天分に発見せざりき、彼れの態度は冷静なりき、乾燥なりき、生硬なりき。彼れの言行には、一点の衒耀なく、夸張
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