藩閥の残党の為には、最も便利なる最も都合善き政変の導火線なりき、何となれば此権力均衡論を決定するの投票権は、当時内閣の中立者たる西郷侯と桂子との手中に在りたるに於て、藩閥の残党にして之と相策応せば、輙ち内閣破壊の目的を容易に達し得可かりしを以てなり、而して西郷侯の機を見るに敏なるを知り、又桂子の純然たる山県系統として閣下の属僚と親密の関係あるを知るものは此の一侯一子が文相更迭問題に付て閣議分裂したる際にも、曾て適正なる調停の手段を取らざりしを怪まざる可く、将た板垣伯が乖謬無名の辞表を天※[#「門<昏」、第3水準1−93−52]に捧げて宸襟を煩はし奉りたる際にも此の一侯一子が閣僚として曾て板垣伯に善を責むるの道を尽さず、以て内閣をして無惨の末路を見せしめたるを不思議とせざる可し、乃ち憲政党内閣が此の事情によりて遂に破壊せられ其の自然の結果として閣下の内閣を造り出だしたるも亦豈偶然ならむや。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]十六※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山県相公閣下、幸福なる閣下は、憲政党内閣の破壊と共に、端なく其の旧勢力を復活して政治上の主人公と為り、而して
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