者あらず閣下は此点に於て確に議院政略の成功を自負するも可なり、さりながら閣下の議院政略は、其実質に於て既往政府の取りたる政略に比して更に恐る可き濁浪を政界に汎濫せしめたり、此の濁浪は党人を溺死せしめ、議院を溺死せしめ、延て政府をして亦溺死せしめむとするの猛力を以て進行しつゝあり、顧ふに閣下は内閣組織の当初より、早く其の政略の弊害斯くの如くならむことを予期せざりしなる可し、唯だ其の如何にもして内閣の存立を永からしめむと欲するに急なる、自ら過失の極処に達するを覚らざるのみ、蓋し閣下は初め猟官を制せむとして或は官吏登庸法を改正し、或は議員の歳費を増加したれども、此れと同時に政治的射利熱を利用して議院を操縦したる結果は、万般の問題総べて賄賂と報酬とに依て決定し、神聖なる議院をして殆ど一種の株式市場たらしめたり、夫れ政治的射利の弊風一たび行はるれば、議員は毫も国庫の支出を惜まずして、唯だ其地位を営利の具たらしめむと謀る、自由党が鉄道国有法案を提議したる如きは即ち此れが為なり、世間或は当期の議会が比較的巨多の議案を成立せしめたるを見て其の成績を著大なりといふものあれども、是れ寧ろ当時議会の腐敗を証
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