ゝありと断言せざる可からず、而して是れ実に方正謹厳の風采家を以て有名なる閣下の統督せる内閣の現状なり、相公閣下、我輩をして有体に閣下の失策を語らしめば、閣下は不幸にして議院政略を何よりも大切とするの謬見に陥りたり、顧ふに立憲国の内閣に在ては議院政略も亦一の重要なる政略たるを疑はずと雖も、単に内閣の存立を謀るを目的として之れを濫用するに於ては、其の弊の極る所殆ど底止す可からず、乃ち閣下が官紀振粛の言責を実行する能はざるも、亦閣下存立の為めに議院政略を濫用したる結果に外ならず、英国のワルポールは、此の議院政略に成功して能く其の内閣を十余年間の久しきに維持したりしも、此が為めに人心を腐敗せしめ、政界を汚濁せしめたる罪悪は挙げて言ふ可からざるものあり、但だワルポールは初めより正人君子を以て自任せず、其言動亦放胆磊落にして、其人物と頗る相照応したりしも独り閣下は方正謹厳の風采家たるを以てして、漫にワルポールの故智を学ばむとするは、我輩甚だ奇異の感なき能はざる所なり。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]六※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山県相公閣下、我輩は特に閣下の議院政略を
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