是れ他なし、議会開設以来既に十余年を経過したる時代は、人文の進歩よりいふも、内外形勢の変化より見るも、到底前世紀の賢人等が出現す可き幕ならずと信じたればなり、我輩は必ずしも此見地に雷同するものには非ず、世の所謂る前世紀の賢人中にも、智力根気共に強壮にして、尚ほ能く時代の精神を駆使する人物なきに非ざれども、而も此の見地は、大体に於て真理を外づれざる鉄案たるは論ずるまでもなし。
 相公閣下、我輩は閣下の尊敬す可き賢人たるを知る、之を知るが故に、我輩は閣下の生涯に汚点少なからむことを望みたり、之れを望みたるが故に、今や其晩節を傷けたるを見て、閣下の為に※[#「りっしんべん+宛」、第3水準1−84−51]惜するの情も亦随つて切なり、之れを※[#「りっしんべん+宛」、第3水準1−84−51]惜するが故に、乃ち忠実に閣下に向て其の処決を勧告す、是れ負傷したる閣下の晩節に対する唯一の臨床療法なればなり。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]三※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山県相公閣下、閣下にして若し初期議会以後の時代を領解し、曾て超然として政界の外に高踏したりとせよ、我輩は決し
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