々たる和気とを以て満たされた近年の盛会であつた。伯の晩年は甚だ寂寞で、殆ど社会に忘られて居つたが、而も伯は社会に忘れらるゝのを怨みもせず、悲みもせず、又毫も自分に対する国民の記憶を要求もしない。こゝらが板垣伯の人格の尊い所であらう。
 ※[#丸中黒、1−3−26]元来伯は犠牲的精神に富める義人の典型であつて、政治家といふ柄ではない。故に政治上に於ては、伯よりも大なる事業を成した人は幾らもある。併し功労の多少は別問題として、伯は明治史劇の或る重なる部分を勤めた役者であるに相違ない。
 ※[#丸中黒、1−3−26]民権自由論は決して伯の専売品ではない。故木戸公や、今の伊藤侯大隈伯などは、伯よりも以前に、少なくとも伯と同時代頃には、民権自由の意義を領解して居つたのである。士族の特権を廃して四民平等の制度を設けたのは、即ち民権自由論より割り出した改革で、此の改革は、勿論伯一人の発議ではないのである。
 ※[#丸中黒、1−3−26]民選議院設立の建白といつても伯の首唱ではなく、当時の政府反対党が案出したる政略的意見であるといふ方が適当である。伯は其の連名の一人たる外に、更に特筆大書すべき異彩を有
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