進歩党の首領

 進歩党の中には、総理大隈伯の退隠を希望するもの少からずと伝へらる。其の意蓋し進歩党不振の原因を以て伯の指導宜しきを得ざるに帰し、伯の退隠に依りて進歩党の門戸を開放し、広く人才を招徠し、新たに適当の首領を求め、以て党勢を拡張すると共に、又政権に接近せむと欲するに在るものゝ如し。近時新聞紙上の一問題となりたる進歩党の改革運動なるものは、此の希望を有する党員を中心として起りたるに外ならじ。彼等は政友会と提携して却つて其の売る所となれる幹部の無策に憤慨し、堂々たる一大政党を以てして其の言動の毫も議会に重きを置かれざるの現状に煩悶し、進では政権に接近するの機会に益々遠ざかり、退ては政界に孤立して漸く民心に厭かれむとするの非運に苦悩し、而して斯くの如き苦悩煩悶憤慨より生ずる自然の反動は、終に彼等を駆て馬鹿らしき謀叛を企てしむるに至れり。大隈伯の退隠を希望すといふ如きは、馬鹿らしき隠謀に非ずして何ぞや。
 大隈伯の進歩党に総理たるは、則ち正当の人物に於ける正当の位地なり。伯の健康にして猶ほ党務に堪ゆる限りは、進歩党は伯を総理とするに依りて其の存在を保つを得可く、又其の存在をし
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