を信ずるもの甚だ少なくして、寧ろ彼れを粗豪の一木強漢と思ふもの多かりき。
 顧ふに彼れが見掛によらぬ学者たるは、今や漸く多数の認識するの所となれりと雖も、其言動の毫も学者らしからざるは他なし、彼れは主我的意思を以て総べての問題を解釈し、我れに利なれば理窟を言ひ、我れに不利なれば無理をも言ふの傾向あればなり※[#白ゴマ、1−3−29]其放胆不諱、剛愎不遜の人に過ぐる所以のものは、亦豈主我的意思の最も発達したるが為に非ずや、故に室内の人物としては、彼は真理を研究するの読書家たりと雖も、彼れの戸外に於ける言動は、唯だ是れ一個主我的意思の強固なる人物を体現するのみ。

      彼の去就は単純なり
 今や彼は一般の想像するが如き大運動なく、其挙動は頗る平和にして、僅に新聞記者を相手として無意義の評論を試みつゝあるのみ※[#白ゴマ、1−3−29]知らず彼は何の考案を有し、何の抱負を今後に行はむとする乎。吾人は妄りに彼れの心事を揣摩せざる可し※[#白ゴマ、1−3−29]されど吾人は一個の見地に依りて彼れの位地を観察するの自由を有す※[#白ゴマ、1−3−29]此見地は彼れの未来に関せずして、彼れの現在の位地に関する見地なり※[#白ゴマ、1−3−29]曰く彼は現内閣の敵なる乎、味方なる乎と。此問題を解答するものは、彼れ自身に非ずして、恐くは現内閣ならむ※[#白ゴマ、1−3−29]何となれば現内閣にして彼れに利なれば、彼は現内閣の維持を冀望す可ければなり。
 世間或は彼れを以て高島一派と結托するの意ありと伝ふものあれども、高島一派の現勢力は殆ど零位なり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れ豈之れと結托するの愚を為さむや※[#白ゴマ、1−3−29]或は自由、進歩両派以外、別に一政党を組織して、大に他日の地を作る可しといふものあれども、彼れの根拠は現在僅かに少数の関東派あるのみ※[#白ゴマ、1−3−29]彼れ豈之れを恃て有力の政党を組織するを得むや※[#白ゴマ、1−3−29]或は彼れを以て専ら力を自由派の扶植に致し、以て大に進歩派と競争せしめ、而して憲政党を分裂せしめ、而して現内閣を破壊せしむ可しといふものあるのみならず、彼れ亦自ら自由進歩の分裂終に已む可からざるを説くと雖も、彼れを認めて熱心なる自由派と為すは謬見なり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは自己を主とするの英雄(?)にして、其眼中
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