として飽くまで沼間と頡頏せむとせり※[#白ゴマ、1−3−29]以て其抱負の凡ならざるを諒す可し。
彼れが自負心強く、夸大の空想に耽り、荘厳なる英雄の舞台に神迷するの状は、亦明かに彼れの風采にも躍然たり※[#白ゴマ、1−3−29]其昂々焉として鷹揚なる処、其冷静にして容易に笑はざる処、其動もすれば気を以て人を圧せむとする処、皆彼れが気象の外表たらざる莫し※[#白ゴマ、1−3−29]然れども彼れ不幸にして、如何なる時代の英雄にも大抵普通なる特質を其風采に欠けり。英雄の特質とは何ぞや曰く磊落粗朴の野性、曰く道理に拘泥せずして盲進する獣力是れなり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れの衣貌は寧ろワザとらしき躰裁を示すに非ずや※[#白ゴマ、1−3−29]彼れは一髪を櫛るにも、香水と鏡台とを要すといふに非ずや、其蝮蛇の如き眼光もて四方を睥睨するの、如何に注意深き神経質を表するかを見よ※[#白ゴマ、1−3−29]其一言一句を苟もせずして勉て多弁の弊を避くるの、如何に小心翼々として或る点に謹慎なるかを見よ、単に彼れの風采よりいへば、彼れは虚飾にして異を衒ふの癖あるものゝ如く、即ち衣冠の英雄にして裸躰の英雄に非らざるの嫌あるを免かれず。此に彼れの性格を判断せしむる面白き一事実あり※[#白ゴマ、1−3−29]彼れが前年井上条約案に反対運動を試み居るの際なりき※[#白ゴマ、1−3−29]一日故後藤伯の馬車を借り、俄に立憲大臣に仮装して、意気揚々と早稲田の大隈邸に乗り込み、以て衆人に一驚を喫せしめて自ら喜びたること是れなり※[#白ゴマ、1−3−29]何ぞ其れポンチ画中の滑稽人物に近きの太甚しきや※[#白ゴマ、1−3−29]斯くの如き風采は、決して英雄普通の性質と両立せざるものなり。
彼れは常に矢野竜渓に兄事し、竜渓を以て大臣以上の人物なりと尊崇し、其人品を評して少なくとも当代一流といひたるものなり※[#白ゴマ、1−3−29]料るに彼れ竜渓を自己の模型となして之れに陶鋳せられんと欲するの余り、遂に一個の小竜渓と為りたるもの歟、然れども今や彼れは竜渓よりも大なる成功あり、多望なる前途を有するのみならず、比較的年少の身を以て多数の先輩を凌駕し、現に進歩党中最も有力なる領袖と為り、彼れの予期せる立憲大臣の位地も遠からずして彼れを迎へんとするに至れるは何ぞや※[#白ゴマ、1−3−29]請ふ少しく余をし
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