来ないやうに仕向けたといつても宜しいと考へる。内閣の弾劾上奏案とも見るべきほどのものを、議長の勝手で拵らへて、議長の単意で提出して、討論の準備なき議院に可否を問ふといふ法はない。ソンな大切な問題を夢中に拍手して通過せしめ、後で大騒ぎを遣らかした議員も議員だが、其議員に不意打を喰はした河野議長の処為も、决して正当とは謂はれない。
△内政は弥縫を事とし、外交は機宜を失すといへる奉答文中の文字は、或は衆議院多数の意向を表現したものかも知れない。併し討論なしに之を可決しては、其文字は全く無意義の空文字となるのである。又た理由を説明せずに斯る上奏文を捧呈するのは、陛下に対する敬礼を欠て居ると思ふ。
△熟ら/\開会以前の形勢を見るに、政友会と憲政本党とは相聯合して内閣に当らうといふ攻撃同盟が成立つたのであるから、議事の進行次第で、閣員弾劾の上奏案が現はるゝのであつたかも知れない。併しソレにしても、十分当局者に質問をしたり、説明を求めたりして、其の上で正々堂々たる討論をも悉くし、今度こそは大に内閣の油を搾つて遣らうといふのは、聯合党領袖株の心算であつたらしい。ソレデ河野が若し聯合党の為に謀つたならば、彼れは独断でアのやうな奉答文を朗読する事は出来ぬ筈である。大石正巳は河野議長の処為を非常に喜むで居つたさうだが、ソレハ一時の感興に打たれたからであつて深く考へて見たら決して喜ぶべき訳のものでない。
△如何に目的が正しくても、手段が正しくなくては憲政を円満に発達せしむることが出来ない。少々は目的が間違つて居ても、之れを達するの手段が正しければ天下の同情を得ることがある。かるがゆゑに、政治家の苦心は、どうしたら手段が正しく見えるだらうと工夫することであつて、所謂る策士といふ奴は、目的は兎も角も手段を正しく見せ掛けるやうに仕組むのが巧みである。河野の今囘の遣り口は、全く之れとは反対であるから、たとひ河野自身では俯仰天地に恥ぢざる積りでも、世間では陰険悖戻の策略を用いたものゝやうに彼れを非難するのである。
△河野自から語る所では、奉答文を政治上の意義あるものとするのは、彼れの年来の持論で、彼れは議長の候補者に推された時、『若し当選して議長の椅子に就くことゝなつたら、此の持論を実行して見ようと決心した』さうだ。是れは真実の自白に相違ない。要するに朝野を驚かした奉答文も、唯だ此の単純なる
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