するの行動を抑制するに在り、侯が容易に自由党の擁立を肯んぜざるは、亦誠に此れが為のみ、而も星亨氏の一たび自由党の実権を握るに及で、自由党は唯だ政治を以て専ら私利私福を営むの具と為し、閣下も亦其の私情を利用して議院政略を運用し、其の結果として自由党は益々腐敗すると共に、閣下の内閣も亦漸く威信を失ふの挙措に出でたること少なからず、是れ伊藤侯が別に局面展開の必要を認むるに至りたる所以なり、但だ侯は局面展開に付て別種の成算あるを以て、今日尚ほ局外に中立して自由党の為に自ら起つの愚を為さゞるのみ。
相公閣下、伊藤侯は今日自由党に擁立せられて直に閣下の内閣に肉薄せざる可し、さりとて閣下は自由党と提携を絶ちて、果して能く内閣の存立を保ち得可しと信ずる乎、閣下の属僚は第十五議会を解散するの覚悟を閣下に求めたりといふも、閣下にして若し此の覚悟を以て自由党の要求を拒絶せば閣下は議院の多数を敵とするのみならずして、閣下に対する伊藤侯の反感も亦必らず此の時を以て事実に現はれむ、何となれば閣下の内閣にして議院の多数を敵とするに至れば、伊藤侯は必らず自ら起つて其の難局を匡救せむとし、以て侯の最も得意なる内閣乗取策を行ふ可ければなり、侯の最も得意なる内閣取乗策とは、他の窮処を見澄まして始めて自ら起つこと是れなり、換言せば侯は水到りて渠自ら成るの機会を待つものなり、故に侯が今日の心事を測れば、閣下の内閣と自由党とが益々衝突せむことを望み、自由党が閣下の内閣と提携を絶つに至らむことを望み、而して自由党が勢ひ侯の命令の下に左右せらるゝに至らむことを望めり、是れ閣下の宜しく領解せざるべからざる事情にあらずや。
※[#始め二重括弧、1−2−54]二十六※[#終わり二重括弧、1−2−55]
山県相公閣下、閣下の内閣が近き未来に於て伊藤侯の内閣に代らる可き運命あるは、殆ど一種の予言として国民に信ぜらるゝのみならず、伊藤侯亦自ら取つて代るの野心勃々たるは、天下何人も恐らくは之れを疑ふ者ある可からず、但だ自由党が伊藤内閣の成立を望むの意たとひ熱切なりとするも、其意単に侯を擁立して私利私欲を遂げむとするに在らば、到底再び衝突するの外なきは明白の理勢なるを以て、侯にして愈々自ら起つの時は、是れ自由党が大に其の内容を改造して、侯の理想に適合せる政党と為りたるの日ならざる可からず、是れ自由党に在ては頗る
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