実を直言するに、閣下の内閣は、過去一年有半の間に於て、啻に政務に付て何の改善したるものなきのみならず、反つて其失政の大なる、議会開設以後の内閣中、最も顕著なるものなり、議会若し健全にして良心に富み、真に国民の利害を代表するの行動あらば、必らず一日も閣下の内閣と両立せずして、早く第十三議会に於て破裂を見たりしや疑ふ可からず、然るに内閣の相手とせる議会は、醜怪なる多数党派の毒泉に涜がされて其の良心を喪ひ、内閣の失政を匡救するを為さずして、寧ろ之れを助長せしむるの行動に出でたり、是れ閣下の内閣が、幸ひに原形を今日に保つを得たる所以なり。
 故に閣下の内閣にして依然今後に存立することあらむか、此一方に於て議会の愈々腐敗する運命を予想す可く、一方に於ては又閣下の失政益々増加するをも予想せざる可からず、斯くの如きは豈国民の能く忍ぶ所ならむや、我輩は必らずしも好で閣下の過失を追究せむとするものには非ず、さりながら閣下にして之れを自覚せざる以上は、我輩は有りのまゝに事実を挙示して閣下の反省を求めざる可からず、顧ふに閣下が一介の武弁を以てして今日の難局に当る初より経綸の一も観る可きものなきは又当然なりとせむ、而も閣下が自ら天下に宣言したる言責を実行せずして、随つて国民の閣下に予期したる冀望の悉く水泡に帰したるは、我輩の甚だ遺憾とする所なり。
 相公閣下、閣下内閣組織以来屡※[#二の字点、1−2−22]官紀振粛秩序保持の美辞を使用したり、而も閣下の内閣は、官紀振粛の代りに、官紀大に紊乱したる事実を示し、秩序保持の代りに、秩序頗る壊頽したる証迹を現はしたるは何ぞや、但し此般の事実は既に天下公衆の知悉する所たるに於て、今敢てこゝに之を詳述するの必要を見ずと雖も、我輩は閣下が有名なる謹厳方正なる風采家たるを尊敬し、而して閣下の内閣が、斯る謹厳方正なる風采家と背馳するの行動あるを怪事とし、乃ち次に其の大要を挙げて閣下の明鑑を仰がむとす。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]五※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山県相公閣下、我輩は曾て多くの冀望を閣下の内閣に属せざりしと雖も、独り官紀振粛の一事は閣下専売の政綱たりしを見るに於て、中心実に此点に於ける閣下の特色が十二分に発揮せられむことを期したりき、而も其事実に現はれたるものを観れば、閣下専売の貴重なる政綱は、殆ど悉く破壊せられて
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