きに伊藤侯が大隈板垣兩伯を奏薦したるは、實に此大勢を利導せむと欲する精神に外ならざるなり、我輩は、當時深く侯の光明磊落なる心事に敬服したりと雖も、不幸にして憲政黨の組織餘りに尨大なりしが爲に、權力の集中點未だ定まらざるに早く既に權力平衡の愚論起り、遂に政敵をして乘じて以て内閣破壞の目的を達せしめたり、さりながら當時若し假すに尚ほ數月を以てせば[#「さりながら當時若し假すに尚ほ數月を以てせば」に傍点]、權力の集中點自然に定まる所あると同時に[#「權力の集中點自然に定まる所あると同時に」に傍点]、政黨の淘汰作用も適當に行はれて[#「政黨の淘汰作用も適當に行はれて」に傍点]、去るものは去り留まるものは留まりて[#「去るものは去り留まるものは留まりて」に傍点]、天下は必ず二大政黨の分有する所となりしや明かなり[#「天下は必ず二大政黨の分有する所となりしや明かなり」に傍点]、故に我輩は憲政黨内閣の瓦解を以て政黨内閣制を否定するの原由なりと信ぜざるも、憲政黨の組織に關しては初より大に遺憾なくむばあらず、何となれば當時憲政黨には第一統一に必要なる首領あらざりしを以てなり、即ち今若し名實兼備の首領ある
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