ー民約説の流れを酌んだもので、日本の國體とは兩立し難き危激な理想を含んで居つた。今日では何人も斯る民權自由論を唱ふるものがない、恐くは伯自身に於ても全く其の持論を一變したのであらうと考へる。
 ※[#丸中黒、1−3−26]要するに、伯は立憲政治の建設に第一の功勞ある人ではない。伯は夢の如き理想を以て夢の如き公生涯に浮沈したに過ぎないのである。
 ※[#丸中黒、1−3−26]併しながら伯のエライ所がないでもない。それは私黨を作らずして公黨を作つたことである。老西郷の私學校は一種の私黨で、老西郷の人物を崇拜する連中の團體であつた。當時政府に反對するものは、動もすれば私黨を作るの傾向があつて、前原一誠の如き、江藤新平の如き、皆私黨を率ゐて事を擧げたのであつた。然るに伯は民權自由論の一點張りで、唯だ理想を宣傳することのみを勉めた。畢竟伯は政權を得むとするの野心がなく、偏へに民權自由論を鼓吹するを目的としたからである。自由黨は其の結果として生れたのである。
 ※[#丸中黒、1−3−26]若し伯にして政權の分配に與らむとする意があつたとすれば、民權自由論は極めて不利の武器であつた。伯は此の武器に依
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