本帝國の代表者として久しく外人に知らる。而も侯は伯に比すれば稍々個人的にして、其の頭腦は獨自一己の圭角を有せり。侯は決して大隈伯の如く社會の各階級と適合し得るの性格を有せず。大隈伯は落々たる自由心胸《オープンハート》を有すれども、伊藤侯は快活なる間にも多少の保守的精神あり。大隈伯は好んで言論を公表し、而も之れを公表するに於て殆ど時と場所とを選まざるの傾あれども、伊藤侯は天賦の辯才あるに拘らず、之れを使用するに於て頗る謹愼なり。
 されば大隈伯は[#「されば大隈伯は」に白丸傍点]、其の生活に於ても[#「其の生活に於ても」に白丸傍点]、飽まで現在的社交的にして[#「飽まで現在的社交的にして」に白丸傍点]、一點山林の氣象なしと雖も[#「一點山林の氣象なしと雖も」に白丸傍点]、伊藤侯は江湖の詩趣を解するに於て[#「伊藤侯は江湖の詩趣を解するに於て」に白丸傍点]、稍々東洋賢人の面目あり[#「稍々東洋賢人の面目あり」に白丸傍点]。侯は一年中の多くの時間を大磯の閑居に費やし、公務の外帝都に出づること極めて少なく、俗客と酬接するよりも、寧ろ讀書に親しむの性癖あるを以て、必らずしも社交の中心たるを求めざ
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