すると共に黨派をも超越して」に白丸傍点]、高く自ら地歩を占めたり[#「高く自ら地歩を占めたり」に白丸傍点]。是れ侯が黨人に喜ばれざる所ある如くに[#「是れ侯が黨人に喜ばれざる所ある如くに」に白丸傍点]、又た藩閥者流にも嫌はるゝ所ある原因なり[#「又た藩閥者流にも嫌はるゝ所ある原因なり」に白丸傍点]。侯は國家の元老たる身分を自覺するがゆゑに[#「侯は國家の元老たる身分を自覺するがゆゑに」に白丸傍点]、時としては黨派の側に立ちて藩閥と爭ふことあるべく[#「時としては黨派の側に立ちて藩閥と爭ふことあるべく」に白丸傍点]、時としては藩閥の忠言者と爲りて黨人の疑惑を惹き起すことあるべく[#「時としては藩閥の忠言者と爲りて黨人の疑惑を惹き起すことあるべく」に白丸傍点]、則ち今囘の和協問題の如き其一發現なりといふも可也[#「則ち今囘の和協問題の如き其一發現なりといふも可也」に白丸傍点]。要するに侯は近かき將來までは[#「要するに侯は近かき將來までは」に白丸傍点]、暫らく政界の大導師として[#「暫らく政界の大導師として」に白丸傍点]、朝野政治家の過失を矯正するを任務とするの最も適當なるを見る[#「朝野政治家の過失を矯正するを任務とするの最も適當なるを見る」に白丸傍点]、是れ侯の如き有力なる元老が國家に對する最高の義務なるべし[#「是れ侯の如き有力なる元老が國家に對する最高の義務なるべし」に白丸傍点]。
 若し夫れ政界の革新を號呼して、漫に元老を無用視する黨人輩は、是れ未だ政界の現状を領解せざるものなり。歐洲立憲國には固より我國に存在する元老の如きものなし。然れども我國に於ては、元老は實に一種の政治的勢力なり。政友會は伊藤侯を離れて必らず存立を危くすべく、憲政本黨は大隈伯に依りて僅に其の形體を維持せり。世に新政黨組織を傳ふるものありと雖ども孰れの元老かを奉じて之れを首領と爲すに非ずむば、政黨らしき政黨は容易に生まれざるなり。されば總裁の行動に不平なるが爲に政友會を退會したる諸氏の如きは、今や立場なき沙漠の亡者にして、殆ど其の身を寄するの地なからむとするにあらずや。彼等は孰れも個人として未だ元老に代るの資望を有せざれば、現存政黨以外に新政黨を造るの困難なるは論ずるまでもなく、たとひ之れを組織することありとするも之れが首領たるものは必らず元老の一人たるべし。而して伊藤侯以上の首領を現存元
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