實質上の進歩なり[#「悉く後俊を以て組織したるは實質上の進歩なり」に白丸傍点]。陸海軍大臣を除くの外[#「陸海軍大臣を除くの外」に白丸傍点]、全然藩閥の分子を一掃したるは形式上の進歩なり[#「全然藩閥の分子を一掃したるは形式上の進歩なり」に白丸傍点]。其の閣員の多數政友會より出でたるを以て之れを政黨内閣といふ可なり[#「其の閣員の多數政友會より出でたるを以て之れを政黨内閣といふ可なり」に白丸傍点]、其の老骨を排して後俊を網羅したるを以て之れを人才内閣といふ亦可なり[#「其の老骨を排して後俊を網羅したるを以て之れを人才内閣といふ亦可なり」に白丸傍点]。余は此點に於て新内閣の成立を祝するに躊躇せず。若し夫れ實際の施設は、今後の進行如何に由て更に評論せむと欲す。(三十三年十一月)

     伊藤侯の現位地

 英國の名宰相ロバート、ピールが曾て保護政策を棄てゝ穀物輸入税廢止論に同意するや、保守黨は彼れを罵つて、變節の政治家なりといひ、一般の批評家は亦彼れの行動を稱して矛盾といひたりき。然れども彼れは此の變節に由りて[#「然れども彼れは此の變節に由りて」に傍点]、反つて國家國民の福利を増進したれば[#「反つて國家國民の福利を増進したれば」に傍点]、則ちたとひ黨首としては一時の物議を免がれざりしも[#「則ちたとひ黨首としては一時の物議を免がれざりしも」に傍点]、政治家としては確かに偉大の成功を奏したりといふべし[#「政治家としては確かに偉大の成功を奏したりといふべし」に傍点]。佛國のギゾー(有名なる文明史の著者)彼れを論じて曰く、ロバート、ピールは、單純なる理論家にあらず[#「單純なる理論家にあらず」に白丸傍点]、又た原理原則に拘泥する哲學者にもあらず[#「又た原理原則に拘泥する哲學者にもあらず」に白丸傍点]、彼れは事實を較量するの實際家にして[#「彼れは事實を較量するの實際家にして」に白丸傍点]、其の終局の目的は成功に在り[#「其の終局の目的は成功に在り」に白丸傍点]。然れども彼れは主義の奴隷たらざると共に[#「然れども彼れは主義の奴隷たらざると共に」に白丸傍点]、必らずしも主義を輕蔑するものにあらず[#「必らずしも主義を輕蔑するものにあらず」に白丸傍点]、彼れは政治的哲學を全能なりとも[#「彼れは政治的哲學を全能なりとも」に白丸傍点]、若くは無益なりとも信ぜざるがゆゑに
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