ざること是れなり、我輩豈一の星亨氏に重きを置きて區々の言を爲すものならむや。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]二十五※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山縣相公閣下、道路傳ふる所に據れば、自由黨の總務委員も亦星亨氏の局面展開論に一致し、聯立内閣の名義の下に政權分配を閣下に要求するの議を決したりと、而して斯る要求の到底閣下に容納せらる可きものたらざるは、我輩既に之れをいへり、閣下にして若し之れを拒絶せば、自由黨は如何なる態度を以て所謂る局面展開の實效を擧げむとする乎、或は曰く、事此に至れば自由黨は唯だ閣下の内閣と提携を絶つの外なきのみと、顧ふに此種の局面展開論は、恐らくは伊藤侯の同意を得るものにあらざる可く、侯は曾て自由黨の爲めに屡々政權分配を要求せられて屡々手を燒きたるの人なり、侯が政黨改造を唱道するの一要義は實に自由黨が常に政權分配を口實として、侯の所謂る大權の作用に干渉するの行動を抑制するに在り、侯が容易に自由黨の擁立を肯んぜざるは、亦誠に此れが爲のみ、而も星亨氏の一たび自由黨の實權を握るに及で[#「而も星亨氏の一たび自由黨の實權を握るに及で」に傍点]、自由黨は唯だ政治を以て專ら私利私福を營むの具と爲し[#「自由黨は唯だ政治を以て專ら私利私福を營むの具と爲し」に傍点]、閣下も亦其の私情を利用して議院政略を運用し[#「閣下も亦其の私情を利用して議院政略を運用し」に傍点]、其の結果として自由黨は益々腐敗すると共に[#「其の結果として自由黨は益々腐敗すると共に」に傍点]、閣下の内閣も亦漸く威信を失ふの擧措に出でたること少なからず[#「閣下の内閣も亦漸く威信を失ふの擧措に出でたること少なからず」に傍点]、是れ伊藤侯が別に局面展開の必要を認むるに至りたる所以なり[#「是れ伊藤侯が別に局面展開の必要を認むるに至りたる所以なり」に傍点]、但だ侯は局面展開に付て別種の成算あるを以て、今日尚ほ局外に中立して自由黨の爲に自ら起つの愚を爲さゞるのみ。
 相公閣下、伊藤侯は今日自由黨に擁立せられて直に閣下の内閣に肉薄せざる可し、さりとて閣下は自由黨と提携を絶ちて、果して能く内閣の存立を保ち得可しと信ずる乎、閣下の屬僚は第十五議會を解散するの覺悟を閣下に求めたりといふも、閣下にして若し此の覺悟を以て自由黨の要求を拒絶せば閣下は議院の多數を敵とするのみならずして、閣下に
前へ 次へ
全249ページ中162ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング