重括弧、1−2−54]十四※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山縣相公閣下、閣下と同主義同臭味の野村靖子は、伊藤侯が大隈板垣兩伯を奏薦したる擧動を評して、是れ神經錯亂の表現なり到底本氣の沙汰に非ずと散々に言ひ罵りたることあるを記憶すと雖も、當時閣下にして若し自ら難局を切り拔くの成算を開示せむか、伊藤侯は必らず喜びて閣下に後事を托したりしや疑ふ可からず、而も閣下は唯だ伊藤侯の政黨論に反對して[#「而も閣下は唯だ伊藤侯の政黨論に反對して」に傍点]、時局と乖離せる超然内閣制を主張し[#「時局と乖離せる超然内閣制を主張し」に傍点]、以て天晴れ大忠臣の肝膽を見せたる外には[#「以て天晴れ大忠臣の肝膽を見せたる外には」に傍点]、曾て政治家として責任ある發言を爲したるを聞く能はざりき[#「曾て政治家として責任ある發言を爲したるを聞く能はざりき」に傍点]、乃ち此の事情を領解するものは[#「乃ち此の事情を領解するものは」に傍点]、恐らくは何人も伊藤侯の擧動を否定するを得可からじ[#「恐らくは何人も伊藤侯の擧動を否定するを得可からじ」に傍点]。
 特に怪む、閣下は憲政黨内閣の後を受けて自ら現内閣を組織するに及で、忽ち其前日の主張を抛棄し少なくとも其の持説を變更して一二の政黨と提携したるのみならず、嚮に閣下の屬僚等が不忠不臣の賊子とまで痛罵したる伊藤侯に對して、今日唯だ其の款心を失はむことを是れ恐れ、大小の事總て侯の意見に聽きて僅に辨ずるを得るが如きの状あるは何ぞや、我輩を以て閣下を觀れば閣下は元來氣むづかしき神經質の人物なれども[#「我輩を以て閣下を觀れば閣下は元來氣むづかしき神經質の人物なれども」に白丸傍点]、實は決して強固なる意思を有する武斷家に非ず[#「實は決して強固なる意思を有する武斷家に非ず」に白丸傍点]、其の權勢を喜び名爵を好むの天性或は人に過ぐるものあらむ[#「其の權勢を喜び名爵を好むの天性或は人に過ぐるものあらむ」に白丸傍点]、而も閣下は政治家として別に卓然自ら立つ所の見地なく[#「而も閣下は政治家として別に卓然自ら立つ所の見地なく」に白丸傍点]、有體にいへば唯だ臺閣の氣象に富める一種の貴人たるに過ぎず[#「有體にいへば唯だ臺閣の氣象に富める一種の貴人たるに過ぎず」に白丸傍点]、是れ政府を世界とせる屬僚の盟主たるには最も適當なる人格にして[#「是れ政府を世界とせる屬
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