所殆ど底止す可からず[#「其の弊の極る所殆ど底止す可からず」に傍点]、乃ち閣下が官紀振肅の言責を實行する能はざるも、亦閣下存立の爲めに議院政略を濫用したる結果に外ならず、英國のワルポールは、此の議院政略に成功して能く其の内閣を十餘年間の久しきに維持したりしも、此が爲めに人心を腐敗せしめ、政界を汚濁せしめたる罪惡は擧げて言ふ可からざるものあり、但だワルポールは初めより正人君子を以て自任せず、其言動亦放膽磊落にして、其人物と頗る相照應したりしも獨り閣下は方正謹嚴の風采家たるを以てして[#「獨り閣下は方正謹嚴の風采家たるを以てして」に傍点]、漫にワルポールの故智を學ばむとするは[#「漫にワルポールの故智を學ばむとするは」に傍点]、我輩甚だ奇異の感なき能はざる所なり[#「我輩甚だ奇異の感なき能はざる所なり」に傍点]。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]六※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山縣相公閣下、我輩は特に閣下の議院政略を攻撃するものに非ず、總て既往十餘年間に於ける藩閥政府の議院政略に對しては中心實に感服する能はざるもの多し、最初は超然主義を表面の口實として、裏面に於ては竊に吏黨を製造し、而も輿論の勢力終に當る可からざるを見るや、解散を以て議院を威嚇するを唯一の政略と爲し、屡々無名の解散を奏請して徒らに民心を激昂せしめ、而して立憲内閣の責任に付ては曾て自ら反省する所なかりき、是れ單に内閣の存立を目的として、時局の大體を觀察せざるより來れる暗愚の政略にして、其の最後の勝利が常に議院に歸したりしも復た怪むに足らず、此に於て乎次に政黨提携の事あり、稱して國務を分擔すといふと雖も、實は官祿を懸けて獵官者を買收したるに過ぎずして、眞に政黨を基礎として内閣の鞏固を謀るの意には出ざりき、憲政黨内閣起るに及んで、稍々政黨を基礎とするの體相を表示したりと雖も、政黨の訓練未だ到らずして權力分配の愚論黨人の間に唱道せられ、流石に國民の輿望を負へる内閣も、是れが爲に遂に無殘の末路を見たりき。
 今や閣下の内閣は既に二囘の議會を經過して、閣員に一人の更迭なく、内閣改造の説幾度か自由黨に依て唱らるゝも、未だ一個自由黨員の入閣したる者あらず閣下は此點に於て確に議院政略の成功を自負するも可なり、さりながら閣下の議院政略は[#「閣下の議院政略は」に白丸傍点]、其實質に於て既往政府の取
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