「凡そ人を殺すは罪惡なれども」に傍点]、故殺と謀殺とは[#「故殺と謀殺とは」に傍点]、其犯罪の度合に輕重あり[#「其犯罪の度合に輕重あり」に傍点]、閣下の過失は譬へば故殺罪の如く[#「閣下の過失は譬へば故殺罪の如く」に傍点]、始より豫備あるの着手に非る可きも[#「始より豫備あるの着手に非る可きも」に傍点]、さりとて閣下固より其過失に對する責任を※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1−92−56]がるゝこと能はず[#「さりとて閣下固より其過失に對する責任を※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1−92−56]がるゝこと能はず」に傍点]、是れ我輩が閣下の爲に深く悲む所なり[#「是れ我輩が閣下の爲に深く悲む所なり」に傍点]、但だ我輩は閣下の名譽の爲に、閣下が此の過失を重ねて益々其徳を傷けざらんことを望み、誠意誠心を以てこゝに謹で閣下の處決を促がすの公開状を與ふ、閣下願くは我輩が以下篇を累ねて説く所を諒とせよ。

      ※[#始め二重括弧、1−2−54]二※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 山縣相公閣下、世には閣下を目して出處進退に巧みなる人なりといふ者あり、我輩も亦閣下が謹愼にして、常に出處進退に注意するの周到なるを信ずれども、獨り閣下が餘りに國家を憂ふるに切なるが爲に[#「獨り閣下が餘りに國家を憂ふるに切なるが爲に」に白丸傍点]、反つて自家の本領に背きて[#「反つて自家の本領に背きて」に白丸傍点]、漫然今日の難局に當りたるは[#「漫然今日の難局に當りたるは」に白丸傍点]、我輩甚だ閣下の爲に歎惜する所なり[#「我輩甚だ閣下の爲に歎惜する所なり」に白丸傍点]、閣下或は國家の急、敢て一身の利害を顧るに遑あらずと言はむ、此の類の言語は、古來往々愛國者の口より聞く所なりと雖も、國家の急は決して斯る單純なる思想の能く濟ふ所に非るを奈何せむや。
 曩に閣下の内閣を組織するや、自ら天下に告白して、我れは一介の武辨なりといへり、是恐らくは閣下の謙辭に過ぎざる可しと雖も、其の中亦閣下が自ら知るの明あるをも表示せり、今此の自知の明ありて[#「今此の自知の明ありて」に傍点]、尋常愛國者の軌轍を脱する能はず[#「尋常愛國者の軌轍を脱する能はず」に傍点]、強て國家の急に赴て之を濟ふ所以の經綸なく[#「強て國家の急に赴て之を濟ふ所以の經綸なく」に傍点]、而して其の有る所のものは一時姑息の
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