「特に伊藤山縣兩侯の調和者として」に傍点]、近來頗る努力しつゝあるは[#「近來頗る努力しつゝあるは」に傍点]、既に公然の秘密なり[#「既に公然の秘密なり」に傍点]。
 案ずるに山縣侯は、其思想性格に於て大に伊藤侯と合はざる所あり。山縣侯は保守的思想を有し[#「山縣侯は保守的思想を有し」に傍点]、伊藤侯は進歩的思想を有し[#「伊藤侯は進歩的思想を有し」に傍点]、山縣侯は謹嚴端實の性格にして[#「山縣侯は謹嚴端實の性格にして」に傍点]、伊藤侯は磊落滑脱の氣質なり[#「伊藤侯は磊落滑脱の氣質なり」に傍点]。且つ山縣侯は由來神經質の人物にして[#「且つ山縣侯は由來神經質の人物にして」に傍点]、動もすれば厭世主義に傾けども[#「動もすれば厭世主義に傾けども」に傍点]、伊藤侯は快豁なる多血質にして[#「伊藤侯は快豁なる多血質にして」に傍点]、樂天主義の人物なり[#「樂天主義の人物なり」に傍点]。其公私の行動に於て往々衝突することあるは、亦已むを得ずと謂ふ可し。大岡氏[#「大岡氏」に丸傍点]は政治家としては固より伊藤侯を推す可きも[#「は政治家としては固より伊藤侯を推す可きも」に傍点]、山縣侯とは亦切て切れられざる關係あるに於て[#「山縣侯とは亦切て切れられざる關係あるに於て」に傍点]、其兩侯の睚眦反目を融解せむと勉むるは何ぞ怪むに足らむや。
 山縣侯が第二次内閣を組織するや、協會員中議論二派に分かる。甲は絶對的に内閣を助けむと主張して[#「甲は絶對的に内閣を助けむと主張して」に白丸傍点]、乙は超然内閣にては反對するの外なしと主張し[#「乙は超然内閣にては反對するの外なしと主張し」に白丸傍点]、大岡氏[#「大岡氏」に丸傍点]の如きは寧ろ後者の主張者たりしと雖も、是れ唯だ一時の權略にして[#「是れ唯だ一時の權略にして」に傍点]、實は山縣内閣をして自由派と提携せしめむとするの意たりしならむのみ[#「實は山縣内閣をして自由派と提携せしめむとするの意たりしならむのみ」に傍点]。蓋し山縣内閣をして自由派と提携せしむるは、是れ山縣伊藤兩侯をして調和せしむる所以なればなり。而して大岡氏は終に其目的を達せり。山縣侯は一切の感情を棄てゝ自由派と提携し、伊藤侯も亦其擧を贊して、背後より山縣内閣に應援す可きの約を爲したり。此に於て國民協會は純然たる山縣内閣の與黨と爲ると共に[#「此に於て國民協會は純然
前へ 次へ
全249ページ中122ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鳥谷部 春汀 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング