。伯を閣員としたる内閣は、不幸にして必らず内部の分裂より破れたりき。之れを伯の失敗といはゞ失敗たるに相違なきも、其の失敗は未だ以て伯の政治家たる名聲を毀傷するに足らざるなり。元來伯は常識の天才なれども[#「元來伯は常識の天才なれども」に白丸傍点]、伯は其の常識を行ふに當つて[#「伯は其の常識を行ふに當つて」に白丸傍点]、動もすれば物理學上の重力法を無視するの嫌ひあり[#「動もすれば物理學上の重力法を無視するの嫌ひあり」に白丸傍点]。例へば伯は決して單純なる放言壯語家にあらずして、又實に謹愼自重の徳あり。而も伯は屡々此の兩極の垂直を保つの用意を缺けることあるが爲に[#「而も伯は屡々此の兩極の垂直を保つの用意を缺けることあるが爲に」に白三角傍点]、或る社會の人は伯を無責任の政治家なりと冷嘲せり[#「或る社會の人は伯を無責任の政治家なりと冷嘲せり」に白三角傍点]。伯は必らずしも剛情我慢、他を壓例して自ら喜ぶものに非ず、又善く交讓し、善く調和し得るの雅量を有せり。而も伯は屡々此の雅量と剛情との水準を秤るを忘るゝことあるが爲に[#「而も伯は屡々此の雅量と剛情との水準を秤るを忘るゝことあるが爲に」に白三角傍点]、共同者の憤懣を買ふことあるを見たり[#「共同者の憤懣を買ふことあるを見たり」に白三角傍点]。伯は反對黨の惡口する如くに、常に便宜に從つて意見を製造する臨機主義者に非ずして、又一家の信條と一貫の理想とを有する政治家なり。而も伯は屡々臨機主義者なりと誤解せらるゝの傾向あるは何ぞや。是れ重力法の原則に頓著せざるが爲なり[#「是れ重力法の原則に頓著せざるが爲なり」に白三角傍点]。今一つ伯に於て發見する所は、伯が清濁併せ呑むの大度と、群情を駕御するの術との間に重力法を應用すること周到ならざるの迹あること是れなり。蓋し伯は自信強きが故に[#「蓋し伯は自信強きが故に」に白三角傍点]、如何なる人物をも包容して其の材料を盡さしめむとし[#「如何なる人物をも包容して其の材料を盡さしめむとし」に白三角傍点]、且つ如何なる不平の聲も之れを鎭撫するに於て多くの苦心を要せずとするの風あり[#「且つ如何なる不平の聲も之れを鎭撫するに於て多くの苦心を要せずとするの風あり」に白三角傍点]。概言せば伯の人格は[#「概言せば伯の人格は」に白丸傍点]、圓滿といふよりは寧ろ多面といふべく[#「圓滿といふよりは寧
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