屡々勅諭を下して之れを誡めたるに、久しければ輙ち懈弛して秩序を紊るの失態を見ると。知らず皇帝は曾て宮中肅清を誡めたることあるか[#「知らず皇帝は曾て宮中肅清を誡めたることあるか」に白三角傍点]。
此の間に於ける伊藤侯の措置は實に迅雷疾風の如くなりき。韓國の上下震慴して、殆ど其の爲す所を知らざるの状想ふ可し。侯の初めに綏撫手段を採りたるもの、今や一轉して壓威手段を執るの止むを得ざるに至れり。斯くの如く侯が前後全く別人に似たるの擧に出でたるは、以て侯の決心の頗る固きものあるを知るべく、侯若し此の機會に於て韓國皇帝の人格を研究せば、其の發明する所亦必らず多からん。顧ふに宮中肅清の事たる、從來日本政府が施政の改善を助言する毎に、先づ第一に之れを勸むるを例とせり。然れども皇帝自ら正うせずして宮廷の正しかるべきやうなく[#「然れども皇帝自ら正うせずして宮廷の正しかるべきやうなく」に白丸傍点]、特に韓國皇帝は最も夜の趣味に感ずること深きがゆゑに[#「特に韓國皇帝は最も夜の趣味に感ずること深きがゆゑに」に白丸傍点]、魑魅魍魎は時を得顏に君側を徘徊して毒焔を煽ぐに於て[#「魑魅魍魎は時を得顏に君側を徘徊して毒焔を煽ぐに於て」に白丸傍点]、宮中の肅清何を以て行はれむや[#「宮中の肅清何を以て行はれむや」に白丸傍点]。所詮陰謀は韓國皇帝の附き物なり[#「所詮陰謀は韓國皇帝の附き物なり」に白丸傍点]。雜輩の出入は之れを禁じ得べしと雖も[#「雜輩の出入は之れを禁じ得べしと雖も」に白丸傍点]、宮廷の陰謀は終に之れを根絶す可からず[#「宮廷の陰謀は終に之れを根絶す可からず」に白丸傍点]。今日宮門の警衞を如何に嚴重にするとも[#「今日宮門の警衞を如何に嚴重にするとも」に白丸傍点]、陰謀は外より來らずして内より發生するを如何せむ[#「陰謀は外より來らずして内より發生するを如何せむ」に白丸傍点]。區々たる門鑑に依りて之れを防遏せむとするは寧ろ或は徒勞に屬するなきを得むや[#「區々たる門鑑に依りて之れを防遏せむとするは寧ろ或は徒勞に屬するなきを得むや」に白丸傍点]。
然らば韓國宮廷の陰謀を根絶するに策なきか、曰く是れ有り、唯だ時間の力[#「時間の力」に二重丸傍点]是れのみ。即ち陰謀を其の發生するに一任し、而して其の發生を檢出する毎に之れを鎭壓し、漸次に其の醗酵力の消滅するを待つのみ。夫れ韓國の禍源は
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