、電車に乗って金と引換えに切符や乗車券を渡して置くと、「折らないで下さい」と再三注意を与えて置くにも係《かかわ》らず、下車のときにはクルクルと巻物のように捲《ま》いてしまう者あり、或いはもうこれ以上折れないというほど小さく折り畳みて鼻糞大にしてしまうものあり、そのために切符を改める手前大いに事務|渋滞《じゅうたい》を来たすものであり。
いくら注意を与えても、乗客は云うことをきかないので、本発明方式を提供した次第である。これを採用するときは天罰覿面《てんばつてきめん》、乗客は反省するであろう。
(本発明方式は、一電気局又は一電鉄会社一乗合自動車会社につき、金五千円也として権利使用を許す。)
〔附記〕折角の発明であったが、そんなことをするよりも、乗客が簡単に折ることの出来ないように、切符の厚さを増大《ぞうだい》し、たとえば省線切符位の厚紙に改造することによって円満に目的を達し得られることに気がつき、本発明は遺憾《いかん》ながら、どこの電鉄にも乗合自動車にも採用されない由《よし》である。
感電砲
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海相「発明小僧というのは、君かネ。」
小僧「そうです。感電砲というのを発明しましたから、国家へ献上《けんじょう》します。」
海相「それはどうも、どこに持って来たのかネ。」
小僧「いや実物は重いので紙に書いて持ってきました。」
海相「二重リング陣形?」
小僧「そうです。下のは艦隊、上のは航空隊ですよ。やってくるところを、こっちは感電砲をサッと向けるですナ。釦《ボタン》一つ押すと紫電《しでん》一閃《いっせん》。太い二本の光の柱です。一本は真直に空中を飛び上る。もう一本は敵陣の中につっこむ。するとパッと黄煙《こうえん》が騰《あが》ると見る間に、艦《ふね》も敵兵も瞬間に煙となって空中に飛散する。これが本当の空中葬……。それでおしまいでサ。」
海相「なんだい、それは。」
小僧「つまりこれが感電砲ですよ。砲から空中へ紫光《しこう》の柱が立ったのは、上空にある強烈なる電気天井ヘビサイド層の電気を下へ導くための電離柱《でんりちゅう》です。これがために強烈なる電気が天井から下りて来る。下りて来るが早いか、もう一本、敵の中へ突っこんだ紫光の電離柱を導わって、敵艦や敵機に集中する。つまりヘビサイド層の強電気が敵軍の上に浴びせかかる。何条もってたまるべ
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