でもつて、その穴になつた數字はかういふ數字であらねばならぬと判別する。この算數學がいはゆる「虫喰ひ算」と稱ばれるものである。
 もちろん、一金五萬兩也、右借用候事しかじかといふやうな一本建の數値だけがあつてそのうちの數字が虫に喰はれてゐるのでは、探しやうがないが、もしそれが加減乘除の運算書であれば、その一部が虫に喰はれてゐても、前後の關係から推理によつて正確に判別することができる。時には、數字の全部が虫に喰はれてゐても、それらの數字の配列が分つてさへゐれば、推理の力を積んでその全數字をいひ當てることができる。
 なほ「虫喰ひ算」に似たものに「覆面算」と名附けるものがある。これは虫喰ひ算ではその數字が虫に喰はれて穴があいてゐるのに對し、「覆面算」では符號または[#「または」は底本では「また」]文字になつてゐるのだ。もちろん數字は一から九までの外に〇の十箇だから、その覆面の符號または文字は十箇以内に限られる。
「虫喰ひ算」と「覆面算」とどつちが面白いか。それは人によつて違ふが、私はどつちも面白いと思ふ。
「虫喰ひ算」を解く鍵は、普通の場合、まづ初めに零の數字か、一の數字であらねばならぬとこ
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