方だこと、この人たち……ふッ! 山犬みたいだ。
ドゥニャーシャ (ヤーシャに)それにしても、外国へ行くなんて、ほんとにいいわねえ。
ヤーシャ そりゃ、もちろんさ。あえて異論は唱えませんねえ。(あくびをして、葉巻を吸いはじめる)
エピホードフ わかりきった事さ。外国じゃ総《すべ》てが、とうの昔に完全なコンプリート([#ここから割り注]訳注 原語は Complexion に当る外来語で「体格」の意味。それを「完成」の意味に使っているおかし味。以下エピホードフの半可通ぶりは続出する[#ここで割り注終わり])に達してますからね。
ヤーシャ もちろんね。
エピホードフ 僕《ぼく》は進歩した人間で、いろんな立派な本を読んでいるが、それでいてどうしても会得《えとく》できんのは、結局ぼくが何を欲《ほっ》するか、つまりその傾向なんですよ――生くべきか、それとも自殺すべきか、つまり結局それなんだが、にもかかわらず僕は、ピストルは常に携帯していますよ。そらね……(ピストルを出して見せる)
シャルロッタ やっと済んだ。どれ行こうかな。(銃を肩にかける)ねえエピホードフ、あんたは大そう頭のいい、大そうおっかない
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