すまい。しかし同じく困苦に耐へるにしても、国民全体は、もつともつと元気に、希望をもつて、明日の戦ひにのぞまなければなりません。それがためには、日本人同士は、どんなことがあつても人を見殺しにはしないといふ、お互の強い信頼があつてほしい。それからまた、われわれがほんとに力を合せ、一緒に智慧をしぼれば、まだまだいくらでも余裕がでるのだといふ安心もあつていゝと思ひます。たゞ、もつと本気になつて、政府も国民も、現在の文化の弱点がいつたいどこにあるかを知らうと努めなければなりません。この方面にいくぶん力の入れ方が足りなかつたのが、今日の新体制を生んだ最大原因だと云つてもよろしいので、今からでも決して遅くはありません。官民協力、経済翼賛の実をあげると共に、上下一体、文化翼賛の美果を結ぶところに国防国家の力強い体制が完成されて行くのです。この意味でわれわれは、当面の生活秩序を一日も早く整へ、世界文化の母胎たる新国民文化を創り上げるために、永遠の計をめぐらさなければなりません。
 日本には昔から立派な独特の文化があります。この香り高い日本文化の伝統をもう一度現代の生活のなかに生かし、一方海外文化の長所を
前へ 次へ
全11ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング