り私たち人間といふものは、当然何れかの民族か、或は何れかの国家に属してゐる、従つてこれで人間といふ言葉を限定いたします。国民といひ換へても差支へありません。殊に今日、日本の置かれてゐる立場を考へますと、さうしてまた同時に、今日私たちが生活の心構へとして、日本の運命について考へなければならない大きな問題をもつてをることを考へますと、その生活の表現としての文化といふものも、国民としてその理想を追求するといふ意味から国民がいろいろな形で発揮する力といふものが、土台になつてゐるわけです。
 従つて国民の活動面全体にわたつて、その国民の文化的水準といふものが現はれてゐるものです。政治・外交はもとより、軍事も経済も、やはり国民の文化能力といふものゝ発揮に外ならぬと思ひます。(昭和十六年六月)



底本:「岸田國士全集25」岩波書店
   1991(平成3)年8月8日発行
底本の親本:「生活と文化」青山出版社
   1941(昭和16)年12月20日
初出:「女子青年 第二十四巻第六号」
   1941(昭和16)年6月1日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年3月1日作成
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