の俳優をふくむ一つの大きな共同作業である演劇全般にとっても、決して等閑視することのできないものなのです。なにしろ、俳優倫理という問題は、恐らく学問としての一つのちゃんとした形はとることができないでしょう。また、私が一年間講義をしても、それが纏るものとは考えていない。これはひとつ、是非皆さんと一緒にこの問題を考えて行きたいと思う。そこで、差当り私がここで受持つ時間を利用して、この俳優の倫理という問題を次のように分けて、みなさんにお話してみようと思います。
先ず、いったい俳優とはどういうことをするものかという問題、俳優とはなんぞやということです。その次には俳優の天職、いいかえれば、俳優がおのずから与えられている所の使命です。第三には俳優の素質、これはいいかえると、どういう人間が俳優になるのに最も適しているか、また更に別の言葉でいいますと、俳優になる人間はどういう資格を具えていなければならないかということです。第四は俳優の才能、ここで素質と才能とはっきり区別しましたが、素質というのは、いわば、その俳優が俳優である前に既に人間として具えている一つの特質です。才能といいますと、その人が俳優にな
前へ
次へ
全106ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング