自分を理想的な姿に於て空想する、――寧ろ幻想するという言葉を使いたい――そういう一つの夢を抱いている、そういうものを自分の頭の中に描き出す、という、そういう人間の本能です。そういうことを実際にして見せる、自分でいろいろな欠点を持ち、いろいろな弱点を持っている人間、その人間がいわゆる完璧な神の姿として現われるということは、これは人間の一つの夢であります。そういう夢を悉くの人間は本能的に持っているものなのである。その夢を実際ある瞬間にでも実現することができる人間というものは、非常に選ばれた人間であった。そういう選ばれた人間が神と人間との媒介をなし得るのです。従って聖職者は、そういう人間の夢を豊富にもっていて、その夢を普通の人間にはでき得ない所まで実現し得る才能を持った人間であったのです。
 そこで次第に原始民族のお祭という形式が、複雑になり、進んでくると、お祭のなかに於ける芝居の最初の芽が段々伸び育って、お祭が複雑になると同様にその芝居というものも複雑になってくる。そうしてそこに、原始演劇というものの形がはっきり現われて来るのです。
 その原始演劇というものの形はどういうものかというと、唯
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